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東京高等裁判所 昭和54年(ネ)1054号 判決

〔編注〕判文は、当審の判決理由に当審で引用した原判決理由及び当審で一部訂正、補足した部分を合わせて構成したものである。

〔抄 録〕

右争いのない事実と≪証拠≫並びに弁論の全趣旨を総合すれば、本件マンションは、昭和四七年八月ごろ完成したこと、被控訴人は、そのころから一〇月ごろにかけて、一、二階を除く建物区分所有権全部を売却したこと、その売買に際し、被控訴人作成の共通の売買契約書、管理規約書、管理委託書をもって買主全員と契約したが、右売買契約書第二五条第一、二項、管理規約書第一八条第一項には被控訴人主張の各約定が明記されていることが認められ(右各約定の記載内容は、当事者間に争いがない。)他に右認定を左右するに足りる証拠はない。右管理規約が被控訴人の作成した附合契約であることは当事者間に争いがないが、この点が右規約の無効原因となるいわれは見出せない。

2 控訴人は、被控訴人の本件広告塔の専用利用権が被控訴人の管理者たる地位において認められたものであると主張する。しかし、右売買契約書(前掲乙第三号証の一)、管理規約書(同乙第三号証の二)によれば、被控訴人の右専用利用権は、区分所有者で売主たる被控訴人と買主との間で、区分所有者たる被控訴人として認められたもので、管理者たる被控訴人として認められたものではないことが明らかであるから、控訴人の右主張は理由がない。

また、控訴人は、買主と被控訴人との右専用利用権に関する合意は買主の錯誤により無効であると主張するが、本件全証拠によるも右錯誤の事実を認めることはできない。

前記売買契約当時本件マンション屋上に広告塔が存在しなかったことは当事者間に争いがないが、契約書・規約書に「広告塔」の文言がなかったというなら格別、本件においては前示のとおり、その文言が明記されているのであり、しかも、≪証拠≫によれば、本件マンション近傍のビルディングの屋上に控訴人主張の程度の大きさの広告板がすくなからず存在することが認められ、このような広告板が右契約当時東京都心部に多く存したことは公知の事実であるから、区分所有者らが契約当時本件マンション屋上に広告塔がなかったからといって、将来塔屋上に本件程度の広告板が設置されるに至ることを全然予想しえなかったというのは当らない。

3 控訴人は、右専用利用権の合意は法の理念に反し無効であると主張するので、以下この点について検討する。本件広告塔が共用部分であることは前記のとおり当事者間に争いがなく、建物の区分所有等に関する法律第九条は、各共有者が共用部分をその用方に従って使用することができる旨規定し、同法第八条によるも、第九条に関しては規約で別段の定めをすることが認められていない。従って、共用部分について合理的な理由もないのに、共有者の使用を禁ずることは右第九条の規定に反して許されないものといわなければならない。しかし、共用部分の中には、廊下や階段のようにその使用が共有者の専用部分の使用に不可欠のものと、建物の壁面とか機械室の屋上部分のようにその使用が共有者の専有部分の使用に必ずしも不可欠とはいえないものがある。そして専有部分の使用に不可欠な共用部分の使用を禁ずることは建物の区分所有権を認めようとする右法律の立法趣旨に抵触して許されないこと明らかであるけれども、専有部分の使用にさほど支障をきたさない共用部分について、一部共有者の使用を制限することはその共有者の同意がある限りこれを許してさしつかえないものというべきである。従って、このような専有部分の使用にさほど支障を与えない共用部分については、同法第二三条、第二四条所定の規約によって、一部の共有者の使用を認めないで他の共有者の専用利用を認める規定を設けることも許されるものと解するのが相当である。

ところで、控訴人代表者尋問の結果によって真正に成立したものと認められる≪証拠≫及び弁論の全趣旨を総合すれば、本件広告塔は、本件建物の屋上の機械室の塔屋の上部に支柱を取り付け、機械室の南北両端に縦七メートル、横一一メートルの二面の広告板を取り付けたもので、広告板の下端は屋上から七・六メートルの高さにあること、したがって、物干場に利用されている屋上への影響はせいぜい日陰が多少増える程度であり、物干場としての利用そのものに対する支障はさほどないこと及び以上の広告塔の利用態様は通常のものというべきこと(右の大きさの広告板が現に存することは当事者間に争いがない。)を認めることができ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。右認定事実によれば、本件広告塔につき共有者の一部の専用利用を認めたからといって、他の共有者の専有部分の使用にさほどの支障を生ずるものとは考えられない。もっとも、≪証拠≫によれば、右広告板は年二回取り換えのため、資材の運搬時に近隣に多少の迷惑をかけ、台風時に広告板の一部がはげ落ちたことが認められるが、これらは設置や運搬技術等の問題であって、本件広告塔の専用利用権の可否を決すべき事由とはならないものというべきである。控訴人は、屋上塔屋(機械室)の性格上、その屋上・側面に設置される広告塔も本件マンションの区分所有者らの構成する管理組合たる控訴人(建物の区分所有者に関する法律第一七条の管理者)において管理されなければならない旨主張し、≪証拠≫によれば、広告板の大きさばかりでなく、掲示される広告の性質や図柄も区分所有者らとしては関心を持たざるを得ぬところ、それが避姙用品の広告であった時期があって、そのことも右主張をなすに至った動機の一つであったことが認められるが、前掲諸事実を総合すれば、本件マンションの維持・使用・管理上、本件広告塔自体が控訴人の管理の対象とならなければならないわけでない。本件広告塔やこれに設けられる広告板が本件マンションの品位・美観を害し、あるいはその維持・使用・管理(被控訴人またはその指定する者の前記専用利用権の対象たる部分を除く。)に支障を生ずるなどの場合には、管理者たる控訴人において管理規約等に定めるところに従い、広告塔について専用利用権を有する被控訴人またはその指定する者を通じ、ないしは直接に、広告主等に対し、かかる広告の排除・是正を求めることができると解すべきであって、従って、例えば前示のような広告がマンションの品位にかかわるとしても、その故に本件専用利用権の定め自体を無効とすることはできない。

以上のとおり、被告の本件広告塔の専用利用権を規定した管理規約は有効であり、これを無効視すべき事由はない。

(倉田 井田 高山)

原判決九枚目表七行目「認められ」の次に「(右各約定の記載内容は、当事者間に争いがない。)」を、同八行目末尾に「右管理規約が被控訴人の作成した附合契約であることは当事者間に争いがないが、この点が右規約の無効原因となるいわれは見出せない。」をそれぞれ加え、同裏三行目の「認めた」を二箇所とも「認められた」に改め、同八行目末尾に「前記売買契約当時本件マンション屋上に広告塔が存在しなかったことは当事者間に争いがないが、契約書・規約書に「広告塔」の文言がなかったというなら格別、本件においては前示のとおり、その文言が明記されているのであり、しかも、当審証人増澤永一の証言によれば、本件マンション近傍のビルディングの屋上に控訴人主張の程度の大きさの広告板がすくなからず存在することが認められ、このような広告板が右契約当時東京都心部に多く存したことは公知の事実であるから、区分所有者らが契約当時本件マンション屋上に広告塔がなかったからといって、将来塔屋上に本件程度の広告板が設置されるに至ることを全然予想しえなかったというのは当らない。」を加え、一一枚目表一、二行目「及び同尋問の結果、証人安達左京の証言」を「本件広告塔・屋上塔屋の写真であることに争いのない≪証拠≫に、同九行目「全くないこと」を「さほどないこと及び以上の広告塔の利用態様は通常のものというべきこと(右の大きさの広告板が現に存することは当事者間に争いがない。)」にそれぞれ改め、同裏初行の「使用に」の次に「さほどの」を加え、同三、四行目「富士急ハイランドの営業に関するものであり」を削り、同八行目の次に「控訴人は、屋上塔屋(機械室)の性格上、その屋上・側面に設置される広告塔も本件マンションの区分所有者らの構成する管理組合たる控訴人(建物の区分所有者に関する法律第一七条の管理者)において管理されなければならない旨主張し、当審証人桜井康弘の証言によれば、広告板の大きさばかりでなく、掲示される広告の性質や図柄も区分所有者らとしては関心を持たざるを得ぬところ、それが避姙用品の広告であった時期があって、そのことも右主張をなすに至った動機の一つであったことが認められるが、前掲諸事実を総合すれば、本件マンションの維持・使用・管理上、本件広告塔自体が控訴人の管理の対象とならなければならないわけでない。本件広告塔やこれに設けられる広告板が本件マンションの品位・美観を害し、あるいはその維持・使用・管理(被控訴人またはその指定する者の前記専用利用権の対象たる部分を除く。)に支障を生ずるなどの場合には、管理者たる控訴人において管理規約等に定めるところに従い、広告塔について専用利用権を有する被控訴人またはその指定する者を通じ、ないしは直接に、広告主等に対し、かかる広告の排除・是正を求めることができると解すべきであって、従って、例えば前示のような広告がマンションの品位にかかわるとしても、その故に本件専用利用権の定め自体を無効とすることはできない。」を加える。

(倉田 井田 高山)

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